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  • Situationの指し示すものとは

    東北にあるとある企業。事業は順調だったが、2011年3月、突然の震災が襲う。
    社員に犠牲者は出なかったものの、家を失ったり、親類を助けに行かなければならなくなったり、それぞれが過酷な状況に陥った。それでも社員は力を合わせて…

    次のような場面について英語で書くことを考える。ここで、「悲惨な状況に陥った」ことを英語で表わす場合、「Situation」を使うのがひとつのやり方として考えられる。

    Situationという単語は、英和辞典を引けば、

    1. 情勢、状況
    2. 立場、境遇
    3. (古風) 職、仕事

    しかしこれだけでは、なかなか実際に英作文や会話で使おうと思っても使えないし、situationという語がおもにどういう状態を指し示すために使われるかもよく分からない。

    まず大震災のときのように、意思に反してとか、予想外の何かで何らかの(特に好ましくない)状況になったという場合は、find oneself in.. という慣用表現がよく使われる。ここで、

    Hit by the earthquake, they found themselves to be in …

    というところまで書ける。次に「Situation」を使って「悲惨な状況」を表わしてみることにしよう。「a harsh situation」「harsh situations」と、単数と複数はどちらがよいのだろうか?そう、英語では単数・複数、a/theが付く、付かないは非常に重要だが、日本人には感覚がつかみづらく難解な問題である。

    今回は、多数の人間が関わった出来事であり(they found..)、状況も人それぞれ違うし、そう考えれば複数形 in harsh situations になるのではないか、とも考えられる。しかしながら、1回の震災によって発生した被災地域の過酷な状況は、たった「1回の」地震が引き金になったという意味で、単一の事象であるともとらえられる。

    そして、Situationという言葉を使う場合は後者がふさわしく、「a harsh situation」となる。被災地に住む人達全員が、その地震のもたらした「One situation」の中に入っているということになる。

    Situationの意味をCambridge Online Dictionary(dictionary.cambridge.org)で調べると、

    The set of things that are happening and the conditions that exist at a particular time and place:

    Cambridge Dictionary

    となっており、小さな物事というよりそれが一定範囲の中に集まったものととらえることができる。個人的な事情にも使えるが、ある時期にある地域・地区・集団などで発生した事象をひとまとめに「a situation」で表現できる。そして、次の文が完成する。

    Hit by the earthquake, they found themselves to be in a harsh situation.

    あくまで一例だが、これで「a situation」の使い方が少し分かってくるかもしれない。

    ちなみに、先に挙げた英文とだいたい同じことを、次のように言うこともできる。こちらの方が「劇的」な感じがある。

    The earthquake threw all of them into harsh circumstances.

  • 「調査」に類する意味を持つ英語(1)

    備忘録として、また他の人の参考のために、「調べる」「調査する」「検査する」「研究する」などを英語で表現するときにおもに使う動詞・名詞と、それらの語源、語の成り立ちの違いなどをまとめておく。

    Survey

    surveyは語源的に分解するとsur「上から」+vey「見る」の組み合わせとなる。Sur-の語素を持つ英単語は、surround, summit, surplusなど非常に多いが、superの語源と同じく、印欧祖語(Proto-Indo-European, PIE)の*(s)uper-にさかのぼる。一方veyはラテン語video「見る」と同語源で、こちらもprovide, video, vision, supervise, envisage, story, advice, evidence, などなど数多の単語の要素として入っている。Surveyという語は「上から広い場所をざっと調べる」というのに近く、中を詳細に調べるというよりも、「概観する」「広い範囲、大きめのグループを調べる」という傾向が強い。

    Inspect/Inspection

    Inspectionを英和辞典で引けば、「点検」「検査」などの訳語が載っている。もちろんそれも覚える必要があるが、単語はよく組み合わされる語と一緒に覚えると、意味合い・語感などがとらえやすいことがある。Inspectionの場合は、

    • Food inspection 「食品検査」
    • Safety inspection 「安全検査」
    • Surprise inspection 「抜き打ち検査」

    が、inspectionの意味を分かりやすく出しているフレーズだろう。
    語源的に見れば、in「中へ」+ spect「観察する」に分解でき、「中をよく見る」から「検査、点検する」という意味になった。Surveyとは対照的に、内部まで詳細に点検する、というニュアンスがある。

    Investigate/Investigation

    Investigationの場合は、「Police investigation」を覚えるといちばん分かりやすい。語の成り立ち的には、ラテン語のinvestigo「追跡する」の借入で、これはIn「中へ」+vestigo「跡を追う」という構成で、vestigoはvestigium「痕跡」から来ている。この語源からの流れでinvestigateは「跡を追って調べる」という意味があり、この語感が「警察の捜査、取り調べ」につながっていると思われる。

    Research

    「研究(する)」という意味としておなじみで、「リサーチ」も日本語になっているが、語源をたどると、「Re」は「繰り返し」、searchはPIE *sker- 「回る」からギリシャ語κίρκος (kirkos)「円、輪」、ラテン語circus「円」、circo「歩き回る」、古フランス語cercher「探す」という経路をたどってきた。なのでResearchを語源通りに見るなら、「何度もまわりをぐるぐる回って調べる」ということになる。なんとなくだが、絵を描くときにモチーフの周りをぐるぐるまわって観察したり、頭の中でぐるぐる動かしてみたりするのも「Research」といえるかもしれない。